10月に観た映画

2019/10/10「HOTEL  MUNBAI 」2018年 豪・インド・米合作アンソニー・マラス監督

  2008年に、インド「タージマハル・ホテル」で起きた同時多発テロを題材としている。

テロリストに占拠されたホテルに、宿泊客500人と従業員たちが、特殊部隊の救助の到着を待つ3日間が描かれている。あまりにも悲惨で残酷なシーンの数々に衝撃を受ける。

だけど、これが実際世界で起きている現実。映画の最初のシーンは、ターバンを丁寧に巻いている従業員アルジュン。テロリストに追われて、小さな部屋に隠れている宿泊客。その中にパニックになった老婦人が従業員であるアルジュンに「ターバン姿をみると不安になると訴える」しかしアルジュンは、「自分はシーク教徒で、頭につけたターバンは、パグリーと言って、シーク教徒には神聖なもので、子供の頃から身に着けずに外出したことはない」と説明すると老婦人は納得する。そんなシーンがとても良い。

  

2019/10/19 ジョーカー(JOKER) 2019年 米 トッド・フィリップス監督

 「バッドマン」の宿敵 悪役ジョーカーの誕生物語。

ベネチア国際映画祭金獅子賞の「今年、必ず観みなくてはならない1本」という広告に踊らされたか、映画興行成績がトップに、主演男優は「アカデミー賞確実」と年末の話題作。

  ちょっと変わったコメディアン志望の主人公のアーサー。母親思いのやさしい青年だ。

しかし病気によって、社会から疎外され、心を病み、狂気へと変貌する。 

ヒース・レジャーの「ジョーカー」は名演だが、なぜ、人は「ジョーカー」に惹かれるのか?「狂気は誰の心にもある地雷なのか?」なにかの拍子にその地雷のピンは抜かれるのを待っているのか?一歩間違えれば、地雷にやられる危険は自分もあるのだろう。

 

2019/10/23 希望の灯り(IN THE AISLES) 2018年 ドイツ トーマス・ステューバー監督 (aislesとは、教会の側廊)

  1989年 ドイツのベルリンの壁が崩壊した。それ以後の東ドイツでの物語。

主人公は、27歳のクリスティアン、男性。仕事は倉庫係(やっと就職できたが、試用期間中)。昔、ワルの仲間がいて少年院にいたようだが、ひどく無口なのは、過去を隠すためか。腕口、首にタトーが見え隠れする。仕事の時は、長袖を着てタトーを隠す。それも、何度も、何度も それはなぜか?仕事場には窓がない。朝なのか夜なのか、自然光が見えない。マイクで流れる、G線上のアリアが夜勤の始まり。巨大なスーパーの倉庫を上から俯瞰で取ると孤独で物悲しさがいっぱいになってくる。休憩のときに飲む、自販機のコーヒーの暖かさ。そして、同僚と話すどうでも良い会話。静かな映画だ。しばらくすると毎日乗るバスの運転手と顔見知りになり会話をするようになる。「今日はどうだった?」「良い1日だったよ。」「あんたは、どうだった?」「うん、良い1日だったよ。」こんな会話が嬉しい。日常は繰り返される。希望とは繰り返される日常。